時事☆放談
時事☆放談『50歳現役キング・カズ』
あれは高校生の頃だったか、もう卒業していただろうか。
日本でプロのサッカーリーグ、Jリーグが発足し、我々の地元ではガンバ大阪という
元は松下電器のサッカー部が主体で、パナソニックがスポンサーのチームができることになって、
吹田の万博公園にあった万博記念競技場まで、たしか完全無料では無かったと思うけど、
最初だからということで誰かから招待券をもらって、開幕戦を観に行った。
野球と違って、ずっと走りっぱなしの選手やあちこち動き回るサッカーは
ボールを追って顔も右へ左へ忙しく、サッカー観戦は弁当食ってる場合じゃないなと
思ったのを覚えている。
観客もサッカーの応援の仕方が分からなくてなんだかヘンな応援だった。
発足してすぐにいわゆるJリーグブームが起こり、カズ、ラモス、武田、
「アルシンドニナッチャウヨ〜」のアルシンド(どんな紹介や)、
踊るカズとは対照的に静かに膝をつき祈るビスマルク。
プレー以外でもなかなかのキャラ揃いで、キャプテン翼も顔負けの役者が揃っていた。
あのころは切れたら願いが叶うって、ミサンガも流行ったな〜。
女子がよく電車とかマクドとかで編んでいるのを目にした。
あれから25年ほどたって、日本のサッカーは信じられないくらい強くなって、
アジアではトップクラス、五輪やワールドカップも出場はほぼ当たり前、
何十人もの選手が海外の一流チームでプレーしている。すごいことだ。
野球で大リーグで活躍した日本人の先駆けと言えば間違いなく野茂英雄だけど、
30年前、サッカーでまだ誰も海外でプレーしていない時代に高校を中退して
単身ブラジルに渡ってプレーしたのが、三浦知良だ。
何がスゴイって、彼はそれからずっと30年間、トップクラスをキープし、
今も現役として活躍していることだ。そんなアスリートは世界的にも希ではないだろうか。
もちろん全盛期のキレはない。だけど40歳を超えたイチローがそうであるように、
その存在そのものがチームメイトの精神的柱となり、メンタル面、自己管理方法、
ライフスタイルや発言や愛用の道具まで、その一挙手一投足が若い選手の手本となっている。
日本サッカー界のレジェンドであることは間違いない。
60歳までやるということだけれど、本当にやれるんじゃないだろうか。
今日の時事☆放談。
キング・カズこと横浜FCのFW、三浦知良選手が開幕戦の日に50歳の誕生日を迎え、
66分間の先発出場を果たした。
チームは勝利し、国外だけでなく海外でも広く報道された。
シュートを決めたときおなじみのカズダンスは親友のトシちゃんこと田原雅彦が完成させたそうだ。
もっと現役を続けて欲しかったけれど。盟友である中山ゴンこと中山雅史。
2年前、張本勲氏がサンデーモーニングで「カズ、もうお辞めなさい」と言ったと報道されて
張本さんはたしかに3000本安打、500本塁打、300盗塁という伝説のものすごい野球選手だったけれど、
アスリートの引き際に言及するものでもないし、サッカーの専門家ちゃうやろ、と少し憤慨していたら、
カズは「『もっと活躍しろ』って言われているんだなと思う。
『これなら引退しなくていいって、オレに言わせてみろ』ってことだと思う」と答えた。
やられた。ずきゅん。
一流のアスリートはどうして受け答えが素晴らしく、人格者が多いのだろう。
スポーツは人を作るというのは本当だ。
張本さんもやられたらしく、次週の放送で、
「カズにあっぱれ! 辞めた方がいいと言われて、普通ならクレームをつける。
それをさらりとかわして、先輩からの助言だと言ってくれる。こんなこと言う人いるの?
男らしいというか腹が据わっている」と絶賛した。
(いやどないやねん! と思ったけど)
サッカー少年が海を渡ってブラジルで修行し、Jリーグ発足と共に活躍し、
50歳でまだ現役を続けている。
すごいなあと。優勝したとかメダルを取ったとかじゃなく、
この継続した活動そのもの、存在が国民栄誉賞に値すると思う。
…最後に、文藝春秋 『Number Web』
<有名人から読者まで> 教えてカズ先生
~44歳のキングに44の質問~ <4限目> より。
Q.44 : 夜もキングですか?(30代・女性)
A.カズ : はい。夜もキングです。
…だそうです。