2017-08

時事☆放談『藤井聡太四段と羽生善治三冠、そしてひふみん』

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あれは今から20年くらい前、90年代の終わり頃だったと思う。

大阪は西天満の老松町にあるギャラリーでの、グループ展に参加した。

 

あのときは何を出展したんだったかなあ。

たしか、2mくらいの紙に墨汁を画材にモップで描いた作品だったと思う。

あのころはなんていうか、ひと味違うことをしたくて、

そんな感じのやり方が自分の中で流行っていた。

でっかい板に着火剤で描いて、それをバーナーであぶった作品とか。(アブないな〜!)

 

でもああいう体全体を使ってでっかい紙に描くの、楽しかったな。

またいつか機会があったら描いてみたい。

 

西天満の老松町は大阪地裁の膝元にあって、大小の法律事務所が

数百軒、軒並みをそろえている。静かというより厳粛な雰囲気の街並みだ。

 

もっとも老松町という地名は今は無いそうで、住所としては西天満1丁目、2丁目〜となる。

 

老松町のもうひとつの顔は、老松通りを中心とした骨董美術だ。

というか、元々そちらの方が歴史が古い。

中之島、淀屋橋、北浜、西天満のエリアにはとっても雰囲気ある大正建築の

レトロな建物が数多く残っているが、この老松町にもステキな

建物が数多く残っていて、骨董品店や画廊が80軒あまりある。

 

グループ展で初めてご挨拶に伺った際、ギャラリーのオーナーに

「ここが安くて旨いんや」とちょっと歩いた中之島の大阪市役所の

地下にある食堂に連れて行ってもらい

「え、ここ一般人が入っても良いんですか」とびびりながらついて行き、

300円ほどの日替わり定食を食べながらそんな話を聞かせてくれた。

ちなみに食堂は今でも誰でも利用できるそうだ。

 

そのときにこのへんの商工会に話を持っていって

老松町の骨董品店や画廊のイラストマップを描いて

それぞれの店に置かせてもらったらどないや、知らんけど、

という話が出て(知らんけどでた〜)

当時筆ペンのイラストマップにハマっていたのでそれは面白いなと

下書きの下準備くらいはしていた記憶があるけれど、

ついぞ立ち消えになってしまった。

 

グループ展が始まっても恐ろしく暇で、まあ無名のグループ展なので

当然なんだけれど、いちおうメンバーが交替で在廊することにしていて

午後なんかはだーれも来なくてそれはもう、おそろしく暇だった。

 

あんまりにも暇なもんでくだんのイラストマップのこともあるし、

近所を散策してみるか、と思ってギャラリーの二筋ほど裏の通りに

入ったところに、その料亭はあった。

 

暑い日で、記憶ではアスファルトからの熱で道路がユラユラして

いたように思う。それだけムンムンとした熱気の中にその料亭は

静かにあって、そこだけ異世界のような空気感だったのを今でも

覚えている。

 

入口には墨で書かれた看板があり、「羽生○○対局中」「関係者以外立ち入り禁止」

とあった(○○は名人など当時の称号)。

対局相手の名前もあったはずだが覚えていない。

 

当時の羽生三冠は将棋界で初の7タイトルを獲ったころで、

僕よりも5歳年上なので、ということはあの頃まだ30歳にも

なっていなかったにもかかわらずものすごい才能だ、天才だ、

このまま行けばいったいどうなってしまうのかという勢いだった。

 

お〜、この奥で羽生さんが将棋を指しているんだなあ。となんだかとても

感動したのを覚えている。

それから20年経って、またものすごい才能の持ち主が現れた。

羽生三冠はもしかしたらそれを待っていたのかもしれない。

 

今日の時事☆放談。

 

藤井聡太四段と羽生三冠、そしてひふみんこと

加藤一二三九段(1239…ややこしい…!)の共通点は中学生棋士で

あったことだ。特に加藤九段は史上最年少棋士・史上初の中学生棋士だった。

 

2017年は各所で活躍する「スーパー中学生」が話題になっている。

その筆頭が藤井聡太四段だと思うが、

6月末に前人未踏、プロ入り29連勝の新記録を樹立し、

マスコミの報道も過熱、「大志」の扇子やクリアファイルなどのグッズも品切れ、

昼食の出前のメニューまでもが「勝負メシ」として話題になるほどだった。

 

このまま勢いに乗って連勝記録をどこまで伸ばすのかが注目されていたが、

次戦であるこのイラストを描いた7月2日に佐々木勇気五段に破れ、

記録はストップした。報道もそれを期に通常トーンに戻り、今は落ちついている。

 

残念ではあるが、きっとホッとした部分もあるだろう。なにしろ、ついこないだ

7月19日に誕生日が来て、まだ15歳。加藤九段の77歳は異例としても、

あと何十年も続くキャリアはまだ始まったばかりだ。

15歳にして大人でもなかなかできないようなしっかりとした受け答えを

しており、それも話題となった。でもたぶん一番の加熱の理由は、

やっぱり彼のちょっと恥じらったような、あのチャーミングな笑顔だろう。

 

今日現在で公式戦成績は34勝2敗となっており、連勝記録よりも

その勝率がすごい。今後佐々木五段とのリベンジはあるのか、そして

勝ち進んで羽生三冠との対戦は実現するのか(4月にAbemaTVの非公式戦で

藤井四段は羽生三冠に勝っているが、公式戦では未対決)とても楽しみだ。

 

そして半世紀以上将棋界のトップを走り続けてきた加藤九段と

藤井四段との関わりもまたドラマチックだ。

藤井四段のプロデビュー戦の相手として62歳差の異色の対決が

話題となったが、これを藤井四段が制し、快進撃はここから始まった。

 

それから半年後、藤井四段が29連勝記録を達成し、加藤九段は規定で引退が決まった。

こんなに形のくっきりした新旧交代もそうはお目にかかれない。

 

将棋界は昨年AIを用いた将棋ソフトを巡る疑惑など暗いニュースがあったが、

藤井四段がそれを吹き飛ばしたように思う。皮肉なのは、藤井四段の

実力が格段に上がったのは、数年前に将棋ソフトでの練習を導入してからで、

メキメキ力が上がったのだというから、面白い。

 

色々なことが、これからはAIとの共存の世界になっていくんだろうなと思う。

 

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2017-08-01 | Posted in 時事☆放談No Comments »